欠点豆はどうカウントする? ― SCA基準による生豆の物理的分析を解説

待ちに待っていた生産者のコーヒー生豆が焙煎所に届き、麻袋の糸を解いて、グレインプロにハサミを入れる瞬間は、いつも胸が高まるものですが、いざ生豆を手に取り、その豆面が期待通りではなかった時の落胆は、言葉では表せないものがあります。
そんな状況を防ぐために、TYPICAのQCは、プラットフォームに流通するすべてのコーヒーについて、カッピングで風味を確認する官能評価(センサリーアナリシス)だけでなく、SCAの基準に基づいた物理的評価(フィジカルアナリシス)を行なっています。
美味しいコーヒーには、生豆の物質としての健全さが不可欠です。今回は、PSS(船積み前サンプル)を例に取り、TYPICAがどのように物理的評価を行なっているかを紹介します。

エチオピア・モプラコの精製所
PSS(船積み前サンプル)の採取依頼
売買契約を締結した後、私たちは契約したすべてのコーヒーについてPSS(船積み前サンプル)の送付を依頼します。この際、最も重要になるのがサンプルの「代表性」です。
そのPSSがどの段階で採取されたものなのか。本当に精選され、包装された後の、船積み直前の袋から採取されたものか。また、特定の一袋からではなく、複数の袋から平均的に採取された代表サンプルなのか。私たちはまず、このサンプリングの正当性を生産者と確認します。このロットの代表性こそが、品質評価のスタート地点となります。
また、依頼するサンプル量は350gです。これは単なる目安ではなく、統計的に、そのロット全体の傾向を正しく反映する最小単位として設定されています。

TYPICA品質管理チームのハビエル・ヘルシ
欠点豆のカウント
届いた350gのPSSの中に、欠点豆や異物が混入していないか目視で確認し、カウントします。SCA基準ではその影響度に応じて2つのカテゴリーに分類されています。
カテゴリー1 (Primary Defect)
コーヒーの味を決定的に損なう、あるいは衛生的にも問題があるものです。スペシャルティコーヒーとして認められるためには、350g中に1粒も存在してはならないとされています。
- フルブラック(黒豆): 精製過程で異常発酵し、真っ黒に変色した豆。不快な濁りや強い汚れをカップに与えます。
- フルサワー(サワー豆): 収穫後のチェリーの不適切な保管や水洗工程によって異常発酵し、酸敗した豆。一粒混じるだけでも、カップに強烈な不快な酸味やカビ臭、腐敗臭を放ちます。
- 外来異物(石、枝、釘など): 味への影響だけでなく、ロースターの焙煎機やグラインダーを破壊する物理的なリスクになります。
カテゴリー2 (Secondary Defect)
一粒では大きな影響はないものの、クリーンカップを損なわせるものです。SCA基準に基づき、350g中の合算が5欠点以内であることが必須条件です。
- 貝殻豆(Shell): 中身が空洞で火が通りやすく、焦げ臭の原因になります。(3粒で1欠点とカウント)
- 欠け・割れ(Broken/Chipped): 脱穀時の衝撃などで傷つき、酸化や焙煎ムラの原因になります。(5粒で1欠点とカウント)
- 虫食い豆(Insect Damage): 風味のクリーンさを阻害します。(5粒で1欠点とカウント)
- 浮き豆(Floater): 乾燥不良や密度不足で色が白っぽく抜けた豆。(5粒で1欠点とカウント)
- 未熟豆(Immature): 完熟前に収穫された豆。渋みや未熟臭の原因になります。(5粒で1欠点とカウント)
パーチメント混入: 脱穀しきれなかった殻付きの豆。(2粒で1欠点とカウント)

TYPICAコーヒーエキスパートチームの永井 和人
数値の測定
見た目や欠点数以外にも、物理的な安定性を左右する数値に「許容範囲(レンジ)」を設定しています。これらは焙煎の再現性や、生豆の長期的な保存性に直結する重要な指標です。
- スクリーンサイズ: 指定されたサイズから上下5%以内の誤差(Tolerance)しか認められません。サイズの揃いは、焙煎時の均一な火の通りに直結します。
- 水分値(Moisture Content): 10%〜13%の範囲内であること。
水分活性(Water Activity): 0.45〜0.60awの範囲内であること。この数値が安定している豆は、保管中の劣化が極めて緩やかであり、ロースターにとって再現性を保ちやすい「扱いやすい豆」となります。

ナディーン・ラウシュがグアテマラ・プリマヴェーラコーヒーのオフィスでロットを確認中
TYPICAは、PSSがこれらの基準に沿っているか1ロットずつ検査を行います。もし基準を外れていた場合は、船積前に生産者と対話し、原因の特定、場合によっては再選別の依頼、あるいはロットの差し替えといった措置を講じます。
TYPICAのプラットフォームを通じて輸入されるのは、PSSがこの「最後の砦」を通過したものです。数値に基づいた客観的な裏付けがあるからこそ、生産者が心を込めて育んだコーヒーは、安心して焙煎していただける状態でロースターさんのもとへ届きます。