What’s in my cup? — aoma coffee × Celso Mayta Java Washed
2025.10.23

Whats in my cup? aoma coffee × Celso Mayta Java Washed

この “What’s in my cup?” では、ロースターがあるコーヒー生産者と出会った物語に耳を澄ませます。地球の裏側ほど離れた場所で生きるコーヒー生産者とロースターは、どのように出会い、いまどのように関係を育んでいるのか。そのあわいを、ロースター自身の言葉で語っていただきます。

第一回目にインタビューさせていただいたのは、大阪・本町のロースター aoma coffee の青野啓資さんです。青野さんは大阪のスペシャルティコーヒー黎明期から現在まで第一線で活躍されており、コーヒーラバーにも同業者にも厚い信頼を寄せられています。aoma coffee は落ち着いた印象のお店ですが、いつも温かい明かりが灯っている場所のように、コーヒーラバーや同業者が大阪を訪れるときには、必ず足を止めたくなるような存在です。

今回は、青野さんと Celso Mayta Java Washed というコーヒーについての物語りです。セルソさんはボリビアのカラナビ地区でコーヒー農園を営む小規模生産者。2020年から現在まで、TYPICAを通じてコーヒーをオファーし続けてくださっています。セルソさんは、TYPICAの生産地投資事業リスティングデポジットにもご参画いただいており、農地を開拓し生産量の向上に取り組まれています。

複雑な社会情勢が行く手を阻み、いまだ広く流通するに至っていないボリビアのスペシャルティコーヒー。そんな中で、セルソさんのコーヒーも、生産量が減少したり、品質に揺らぎがある年もありましたが、青野さんは彼のジャバ種に魅力を見出され、継続的に彼のコーヒーを調達しています。

それでは、青野さんにお話を伺ってみましょう。

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― セルソさんのコーヒーに出会った時の印象を教えてください。

出会いは、TYPICAのカッピングでした。当時入ってきていたボリビアやペルーのコーヒーは、派手やかで今っぽいものが多くて、もちろんそれもいいんですが、自分がお客さんに紹介したい、というタイプのものではなかったんですよね。だから、セルソさんのカップはすごく印象に残りました。「あ、全然違う」と思って。「ああ、こういうコーヒーもあるんだ。出会えてよかったな」と感じました。自分で焙煎してお客さんに紹介してみたいな、って思ったのを覚えています。

もともとボリビアのジャバ種が好きなんですけど、なかなか「これだ」と思える風味に出会えなくて。でもセルソさんのコーヒーには、それがちゃんとあったんです。一言でいうと、陰と陽というような。派手やかで明るい感じがあるけど、同時にちょっと陰のある、深みのある味わい。花っぽさもありながら、土っぽさもある。その両方をバランスよく感じられるのが好きなんですよね。緑茶や中国の発酵茶のような、お茶感がひっそりあるようなコーヒーが僕は好きで、それもしっかり感じられて、美味しいなと思いました。

2024年のクロップも、めちゃめちゃ良かったです。お客さんにもすごく好評で、もちろん常連さんは毎年楽しみにしてくれますが、初めてのお客さんからも「美味しかった」と言ってもらえることが多かったですね。ただ、去年とは少し印象が違いました。TYPICAさんからも聞いていたんですけど、フレーバーは問題ありませんが、少しディフェクト(欠点豆)はあったかなと思います。その分、慎重にチェックしながら焼いていました。

― セルソさんのジャバについて、風味にフォーカスしてもう少し詳しく聞かせてください。

セルソさんのコーヒーに感じるような、お茶の旨味のような要素をネガティブに捉える人もいますが、僕はそうは思いません。青っぽさや土っぽさはコンペティションでは評価されにくいかもしれませんが、お客さんが美味しいと感じれば、それはもう「正義のコーヒー」だと思っています。

aomaの裏テーマとして今後取り組んでいきたいのは、フルーティーやフローラルといった、派手で分かりやすい風味だけではないコーヒーの魅力を伝えることです。派手さはなくても美味しいコーヒーはたくさんあります。セルソさんのコーヒーも、そのひとつだと思います。そうした多様性があるほうが、コーヒーはもっと面白くなると思いますね。

― 旨味は、今世界中で注目を集めていますよね。これをどう解釈されていますか?

少し前に、ノーマ(コペンハーゲンの先駆的なガストロノミーレストラン)が京都で日本の食材だけを使ったポップアップをやっていたんです。幸運にも行くことができたんですが、彼らの料理はまるで「旨味爆弾」みたいだった(笑)彼らが日本の食材に惹かれる理由って、きっとこの旨味なんだろうなと思いました。特に魚介の旨味が印象的で。海外の人にとって、海藻や貝に感じる磯の旨味は分かりやすいのかもしれませんね。このような旨味を、コーヒーにも感じることがあります。例えば「これ、ホタテの出汁スープみたいだな」と思うような、海のミネラルを感じるゲイシャに出会ったことがあります。

もちろん、フルーティーでフローラルなゲイシャのイメージからすれば、そんなコーヒーに違和感を持つ人もいるかもしれません。でも、僕はそういう風味も面白いと思うんです。もしその背景に「この農園の土壌は昔、海の底だったからミネラルが多い」といったストーリーや科学的な裏付けがあれば、それはワインと同じようにテロワールの一部として語ることができる。今は「プロセス」や「酵母添加」といった技術面に注目が集まりがちですが、僕は、セルソさんのコーヒーに感じられるような、土壌の個性やそこから生まれる旨味にもっと注目したいですね。

ワインも同じように「この酵母を使えばこういう味になります」というように、プロセスで味をつくり出す手法があり、どんな素材でもある程度の品質を保つことができるようです。でも、そうした流れに対して「それは違う」と異を唱える生産者が必ず現れ、新しいムーブメントが生まれていく。いわば、カウンターカルチャーのような存在です。新しいものが生まれれば、それを壊そうとする人が出てくる。その繰り返しが文化を前に進めていくんだと思います。どうしても僕は、メインストリームではない側を応援したくなってしまうんですよね。

今のコーヒー業界の流れも、次の時代をつくるための過程なんだと思うと、今後が楽しみでもあります。結局、本当に上手な人は、今の主流をきちんと理解しながら、次の波が来たときには自然とそこに乗り換えられるのでしょうね。

― セルソさんのジャバは、どのようなアプローチで焙煎されていますか?

焙煎技術に関してはあまり言うことはなくて(笑)若い子たちは焙煎の理論化や言語化がうまくて、それを聞いて「そうなんや〜」と思うくらいで。

うちは、コーヒーに合わせて火力調整をするだけです。例えば、前半の火力を強くするか普通にするか、ハゼたときにどれくらい火が豆に当たっているかなどをコーヒーによって変えるだけで、基本的なアプローチは一緒なんです。セルソさんのジャバに関しては、前半の火力を強くしていますね。

コーヒーの味を出すというよりは、コーヒーが持っている味のバランスを取るのが、焙煎をする自分の役割だと考えています。焙煎は一種のフィルターぐらいの感覚で、コーヒーは、なるべくそのままお客さんに紹介するという気持ちでやっていますね。

― 続いて、買い付けについてお伺いします。TYPICAをはじめ、オファーサンプル(生産地から届くサンプル)で購入を決めるダイレクトトレードの買い付けについて、どう感じられていますか?

毎年買っている生産者のコーヒーであれば、なんとなく傾向が分かる部分もあるので、「今年も買っておこうか」と決めることもあります。ただ、それ以外については、正直、確信を持って買うわけではありません。

いまカッピングしているこのロットが入港後どうなっているか想像して、いい予感が感じられたら購入しますが、半分はギャンブルのようなものです。でも、その不確実さが楽しいんですよね。カッピングで「すごくいい」と思って飛びついて買っても、実際に届いたときに「あれ?」となることもありますし、その逆もあります。そういうリスクをまったく取らないロースターもいますが、それもその人のスタイルだと思います。

僕も最初の頃は「あれ?」と思うこともありましたが、経験を重ねるうちに、そういうこともあるものだと分かるようになりました。もちろん、品質不良であったり、まったくの別物であればそれは問題ですが、「思っていたのとちょっと違うな」くらいであれば、ある程度は許容していいと思っています。むしろ、そういうときこそロースターの腕の見せどころだと思いますね。

― 最後に、セルソさんのジャバをどんな人に飲んでいただきたいですか?

日本の風景が好きな人、ですかね。そういう人は、このコーヒーの旨味に反応してくれると思います。

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確かな経験を重ねてこられた青野さんだからこそ、コーヒーの本質を捉えたお話をお伺いできました。星の数ほど生産されるマイクロロットの中で、希少品種や特殊な精製方法が注目を浴びるのは自然なことですが、TYPICAとしても、滋味深く、長く付き合っていけるようなコーヒーの魅力をしっかり媒介することこそが重要であると考えています。農園ごとのテロワール、生産者の仕事ぶりのような微細な「美味しさ」をコーヒーラバーが日常的に感じ取れるような世界を、ダイレクトトレードを通じて実現していきたいと、改めてTYPICAのビジョンに立ち返ることができました。

青野さん、お話を聞かせていただき、有り難うございました!

今回登場したコーヒー:Celso Mayta Java Washed農園ツアー
インタビュアー:藤井優衣、今岡ありす(コミュニティマネージャー)
テキスト:山田彩音