Java Frinsa Estate Wildan Mustofa

Wildan Mustofaウィルダン・ムストファ

Java Frinsa Estateジャバ・フリンサ・エステート

目指すは皆との共存共栄。機会はいつも平等に

インドネシアは、世界でも五指に入るほどのコーヒー生産量を誇るが、生産性は相対的に低いと言われている。多くの農園では樹齢30〜40年以上の老木からコーヒーを収穫しており、新陳代謝が進んでいないこと。近代的な施肥、剪定、病害対策が普及していないこと。異なる品種を同じ農地内で育てるケースが多く、品質の一貫性を維持しにくいこと。高齢の農家が多く、革新的な技術を導入しにくいこと……等々、複数の要因が絡んでいる。

そういった構造問題を解決し、地域コミュニティ全体での発展を志しているのが、2012年に創業したジャバフリンサ農園だ。西ジャワ州のバンドン高地でスペシャルティコーヒーを栽培するだけでなく、200人の契約農家が所属するコレクティブ(共同体)を4地域で形成し、彼らへの技術指導、精製を行っている。

コミュニティの皆が利益を得ながら、地球環境を守り、地域社会を発展させる──。そんなビジネスのあり方を目指すジャバフリンサは、「最小限のコストで最高の品質」を基本姿勢に、データの管理・共有やシステム化を促進することで属人化を防ぐなど、高品質なコーヒーを一貫して生産するための創意工夫を凝らしてきた。

インドネシア・ブリュワーズカップ2018では、彼らのコーヒーが最高得点を獲得。ヨーロッパやアメリカの顧客との取引も始まった。決して独り勝ちを狙わず、コミュニティの人々を巻き込みながら発展を続けるジャバフリンサの魅力に迫る。

社会問題をビジネスで解決

2000年代後半、ジャバフリンサ農園のあるバンドン高地では、雨季が訪れるたびに発生する洪水や地滑りが地域住民の暮らしを脅かしていた。できるだけ収入を増やすために年に3回野菜を収穫するやり方が広まった結果、土地の保水力が失われ、土壌侵食が起こりやすくなったことが根本的な要因だった。

仕組みはこうだ。雨水が地中に浸透せず、一気に河川へ流出した結果、雨季には洪水が増え、乾季には水源が枯渇しやすくなる。水源の安定供給が難しくなり、上水道や灌漑用水に使える水が減る。特に乾季にはダムや水路の水位が下がり、断水や取水制限が起きる。チタルム川の水は水力発電や上水道、農業用水にも使われているため、下流にある都市部の人たちも含め、数千万単位の人々の暮らしに影響するのだ。

「私がいる地域でも、人々は小さな田んぼの中に井戸を掘らざるを得なくなっています。これは、後先考えずに土地を開発した一部の身勝手な人たちによって引き起こされた人災なんです」とウィルダンは言う。

その問題意識が、ヴィルダンを動かした。地中に深く根を張るコーヒーは保水力があり、雨季に降った水分を地下水として蓄えることで、乾季にも水資源として使える。そう見込んだウィルダンは、コーヒービジネスで地域の諸問題を解決すべくジャバフリンサを創業した。

以前、Nufficの奨学金でオランダに留学していたウィルダンは、オランダの農業エンジニアの力を借りながら、農家への技術支援から物流、輸出体制の整備まで、ビジネスの基盤を整えていった。しかし、農家が栽培したコーヒーの品質は全体的に低く、一貫性がない、品質が良い場合でも適正価格で買ってもらえないという壁にぶつかった。

Spacer

最小限のコストで最大限の効果を

そこでウィルダンは路線を変更。国内のみならず、エチオピアやベトナムといったといった主要な生産国にも足を運んで、コーヒーの生産現場を視察。学んだものを自分たちの土地や状況に合うようにアレンジしながら取り入れていった。自分が最善だと信じることを実践して結果を出せば、他の農家もおのずとついてくると考えたからだ。

ビジネスモデルを構築するうえでウィルダンが常に心に留めていたのが、機会の平等を確保することだ。リソースが限られた貧しい農民たちでもコーヒーの品質を高められるように、「最小限のコストで最大限の効果を得る」方法を編み出してきた。

「手作り感のある苗床はその一例です。高価な遮光ネットや鉄柱を購入するかわりに、シェードツリーとなるマメ科の木を植えることで、理想的な環境をつくり出しています。そのコストを抑えた分だけ、農家たちに安く苗や種子を提供できる。

また、果肉やパーチメントを剥いで生豆の状態で輸送することで輸送コストを抑えつつ、それらを肥料として活用することで、肥料コストも抑えられます。土地の耕起も最小限にし、刈った雑草やシェードツリーから落ちた葉や枝をそのまま土の上に被せておくことで、雑草の発芽・成長、土壌侵食を防ぐだけでなく、有機物や微生物の生態系を守っています。木も生き物なので、雨風や寒暖差から守られた快適な環境であれば、健康に育ちやすくなりますからね。

さらには、単位面積当たりに植えるコーヒーノキの本数を従来の倍程度に増やし、剪定の方法も合理化することで、常に一定の生産性を保ちつつ、自然な世代交代が促されるようにしています。作業効率を高められるように木を小さく保ち、良好な採光性、通気性を維持できる形状に整えれば、木は常に若々しくいられるんです。

とにかく、お金をかけなくても効率性、生産性を高める方法はいくらでもあります。ただコストを抑えることが目的ではありません。脱果肉→未熟豆除去→粘液除去→サイズ分けまで一台でこなせる高性能な機械をウォッシングステーションに導入するなど、投資すべきところには投資していますよ」

Spacer

エコシステムを構築する

フリンザ・コレクティブに加入している200人のコーヒー農家は、自分たちが収穫したコーヒーを、ジャバフリンサが所有するウエットミルで精製し、倉庫で保管してもらうことができる。自分で精製まで手がけることで、より付加価値の高いコーヒーとしてバイヤーやカフェに販売できるようになった。

当初、コーヒーの栽培に慣れておらず、知識もスキルもなかった彼らにコーヒー生産を始めるよう促す際も、ウィルダンは率先垂範の姿勢を変えなかった。自身の地域から人を連れてきて農場を開墾し、苗床をつくるところから始めたのだ。働き盛りの男性は基本的に都市部に出稼ぎに行っているため、地元にいる年配の女性を巻き込んで苗の植え付けや収穫をおこなった。

女性たちと話してみたところ、本当は夫と一緒に暮らしたいが、地域には仕事がないためそれが叶わない事情があるとわかった。逆に言えば、コーヒー生産で十分な稼ぎをまかなえれば、出稼ぎに行く必要はなくなるのだ。

「当初、男性は月に2〜3日だけ戻ってきて農園の草取りをする感じでしたが、2〜3年後に収穫が始まった頃には地元に定着し、農業に専念する人が増えていきました。

今では私たちの農園で働いているスタッフは全員、地元の人たち。彼らは自分自身の農園を持っているので、午前中に働きながら学んだ技術を、午後には自分の農園で実践できるようにしています」

ジャバフリンサは地域社会に公益をもたらすべく、以前、小学校しかなかった地域に中学校を設立。地域のすべての子どもたちに教育の機会を等しく提供できるようにした。SNSで「農業で海外に行ける」「村にいながら世界とつながれる」という前向きなメッセージを発信してきた甲斐もあり、故郷に戻ってきた若者も増えている。さらには、コーヒーを植えて土壌環境が改善されたことで、自然のろ過作用により、清浄に保たれた湧き水が出るようになった地域もある。

「『貧しい人たちの中で自分だけ裕福になるのはよくない。みんなで豊かになるほうがいい』と父もよく言っていましたが、お金がある人たちしか実践できないやり方だと、貧しい人たちは取り残されて地域内で格差が生まれてしまう。私たちも地域社会の一員であり、同じエコシステムの中で生きていることに変わりはありません。ビジネスは、地域全体に利益をもたらし、皆が幸せになれる経済システムをつくるための手段だと思っています。

私ももう若くはないので、最近は積極的に大学と協働するようにしています。『年老いた犬に新しい芸は仕込めない』と言うように、歳をとると人間はどうしても前例踏襲にとらわれやすくなる。だからこそ、若い人たちにコーヒービジネスに関わってもらうことで革新を生み出し、組織や地域の新陳代謝を促したいんです」

Spacer

Wildan Mustofa

Java Frinsa Estate