Fazenda Canta Galo Heron Reger de Carvalho Junior

Heron Reger de Carvalho Juniorエロン・ヘゲル・ジ・カルヴァーリョ・ジュニオル

Fazenda Canta Galoファゼンダ・カンタ・ガーロ

コーヒーづくりに想いを乗せて。道は自分で切り拓く

ブラジルのコーヒー生産は、総じて工業化、産業化が進んでおり「質よりも量」を重視する傾向が強い。大規模機械や最新技術の導入により効率性、生産性が高まり、安定的かつ大量のコーヒー供給が可能になる。一方、均一的、画一的であるがゆえに地域や農園ごとの個性的なフレーバーは失われやすく、愛着も生まれにくくなる。

カンポス・アルトスで、母と2人の姉妹と80haの農園を運営するカンタ・ガーロ農園のエロンJrは、コーヒー生産に情緒を足すという異端の道を歩んできた。現在、年間で雇用している正社員は7名。「農園50haにつき1人の従業員と1台のトラクター」を適正規模の目安として農家に提示するコンサルティング会社もある中で、高品質なコーヒーづくりに特化するためにも、多くの人を雇用し、細部まで目を行き届かせている。150以上のロットを生産できているのも、人の手が介在しているからだ。

「ワインと同じように、コーヒーの生産工程には多くの繊細な部分があります。工業的につくれば、工業製品しか得られません。そこに人の手を加えれば、より丹念な作業や細かい配慮ができて、より良い成果につながります。たとえば乾燥工程をトラクターに任せることもできますが、うちでは人に関わってもらっています。その方がコーヒー豆をはるかに健全に保てるからです」

2014年から始めたその革新は、着実に実を結んでいる。なかでも2019年にミナスジェライス州主催の品質コンテストで3位を獲得したことを機に、世界への扉が開かれた。海外のロースターたちから「直接コーヒーを買いたい」というオファーが届くようになったのだ。それまですべてのコーヒーを協同組合や商社にコモディティとして販売していたカンタ・ガーロ農園にとっては、大きな一歩だった。

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ダイレクトトレード100%を目指して

今でこそ家族が一丸となってコーヒー生産に取り組んでいるカンタ・ガーロ農園だが、はじめからそうだったわけではない。2014年、獣医として働く傍ら、農園の世話をしていた父が50代後半で急逝したことを機に、農園の将来をめぐって家族間で意見が割れたのだ。

当時、公立校で体育教師を務めていたエロンJrは、収穫期のみコーヒー栽培を手伝う立場にすぎなかった。それでも彼は家族会議で「コーヒー業界は転換期にある。今こそこの波に乗るべきだ。品質を上げるために投資をすれば、コーヒーはもっといい価格で売れて賞も取れる」と主張した。隣の農園がコンテストで何度も入賞し、成功を収めていることを知っていたからである。

「今は財務状況も良くないし投資する価値はない、コモディティだけで十分だ」という反対意見も出たが、エロンJrは現状を説明して説得。発酵槽やフルウォッシュド用の設備、ドライミル設備の導入など、積極的に設備投資を進めていった。さらには収穫や乾燥の責任者を配置するなど、管理体制も強化した。

「それまで全然違う仕事をしていたので、固定観念にとらわれない発想ができたんだと思います。特にコロンビアやパナマの農園について幅広く研究した経験は、品質で勝負する方針を固めるうえで大きく役立ちました。家族的な雰囲気の中、一つひとつの工程に手をかけているところにインスパイアされたんです」

2019年以来、エロンJrは「コモディティに依存しないこと」を目標に掲げ、ロースターとの関係構築に努めてきた甲斐あって、2025年はおよそ80%のコーヒーをダイレクトトレードで販売した。収益が向上し、家族全員がその恩恵を受けたことで結束も深まった。それでも、エロンJrは満足していない。

「目指しているのはダイレクトトレード100%。長くお付き合いしていけるパートナーとつながるために大切なのは、正直かつ誠実でいることだと思っています。コーヒーが手元にないのに、嘘をついて他人のコーヒーを調達するような真似はしたくないんです」

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エロンJrの父

自由を尊重してもらえたからこそ

父の死後、すぐに農園を継ぐことを決めたエロンJrだが、農園を継ぐように求められた事は一度もない。むしろ「この農園は私が面倒を見るから、おまえは自分の夢を追って自分で未来を切り開きなさい」と後押しされていた。体育教師になったのも、子どもの頃からずっとスポーツが大好きだったからである。

「父はとてもフェアで懐の深い人でした。自分たちがやりたいことを思う存分やれるように、厳しさと強さをもって導いてくれました。一緒に釣りに行ったり、旅行したりと、語り尽くせないほどいい思い出があります。コーヒーについても、達人級の知識と技術を持っていました。父について否定的に感じることは何一つありません」

エロンJrがビジネスを大きく発展させられる可能性を信じ、専業農家となって100%のエネルギーをコーヒー生産に注ぎ込むことを決めたのも、そんなバックグラウンドと無関係ではない。

「今の課題は、顧客の需要に応えられるほど生産量を確保できていないこと。生産能力はまだ余力があるので、農地を借りて良質なコーヒーの生産量を増やし、顧客の期待に応えていきたいと思っています」

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