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2025.11.09

TYPICA Collective Brazil 2025 Recap

背景

TYPICAは、2025年からブラジルのアラシャという街に拠点を構え、相場の乱高下に左右されないサステナブルなコーヒーの流通を目指し、コーヒー生産者コミュニティの形成を行っています。二人の現地メンバーが、何のつてもないところから一軒一軒の生産者に声をかけて、コミュニティの姿が少しずつ見え始めています。

企業と生産者との長期固定価格契約や現物の売買において徐々に成果が出ている中で、私たちは生産者たちの新たな願望を見出しました。

それは「トップクオリティのコーヒーをダイレクトトレードで流通させたい」というニーズです。そうした声を挙げる生産者の多くは、伝統的な農家を受け継いだ若者や、ここ数年でコーヒー生産を始めた新世代の人々です。彼らは旧来のブラジルにおけるコーヒーの流通を、自分たちの世代でアップデートしたいと望んでいました。乱高下する相場によって、ますますマネーゲーム化するコーヒー産業への反骨心がその背景にあるのかもしれません。

ブラジルという伝統的な生産国において、高品質なコーヒーのダイレクトトレードは、他国と比べると盛んとは言えません。彼らはカップ・オブ・エクセレンスに出品することはあっても、ダイレクトトレードの顧客を持つことは少ないのです。

TYPICAは大手カフェチェーンから小さな焙煎所まで、多種多様なバイヤーが利用するプラットフォームです。生産者はTYPICAを通じて、コマーシャルコーヒーからトップクオリティまで、様々なグレードのコーヒーの販路を最適化することができます。

こうした生産者たちの思いを受け取り、「彼らの高品質なコーヒーをロースターに直接届けたい」という願いから、TYPICA Collective Brazil は始まりました。

TYPICA Collective Brazil 2025

TYPICA Collective の初めての舞台に、世界中のロースターとブラジルのコーヒー生産者が集まりました。会場となったのは、歴史的なコーヒー貿易港サントスにある「コーヒー博物館」です。ここは、かつてコーヒー取引所として使われていた建物で、現在は博物館として残されており、ブラジルのコーヒー取引の歴史を象徴しています。今回は4軒のロースターと10軒の生産者が参加しました。

ACR(韓国)

ソウルを拠点に、韓国のスペシャルティコーヒーシーンを長年支える Alegria Coffee Roasters(ACR)。“Great Coffee, Crafted with Integrity” を掲げ、品質と誠実さを両立するロースティングにこだわる。2025年にはクウェートに海外初店舗をオープンし、アジアから中東へと活躍の場を広げている。今回はオーナーのキヨンさん、ヘッドロースターのジェミンさんが参加。

GLITCH COFFEE & ROASTERS(日本)

東京・神保町に本店を構える GLITCH COFFEE & ROASTERS は、浅煎りとシングルオリジンに特化した日本のパイオニア。世界中のトップロットを扱い、コーヒーの個性を最大限に引き出す焙煎で知られる。日本国内外のバリスタやロースターに多大な影響を与え続けている存在。オーナーの鈴木さん、ロースターの川島さんが参加。

Special Guest(イギリス)

ロンドン・メアリルボーンにある Special Guests は、UKバリスタチャンピオンを2度制したポール・ロスが率いるロースター。競技会で培われた感性をもとに、世界各地の希少なロットを厳選。カフェでは一杯の抽出体験を通じて、コーヒーがもたらす “特別な瞬間” を日常に届けている。今回は同店のヘッドオブコーヒーであり、2024年、2025年のUKバリスタチャンピオンでもあるローサさんが参加。

Swerl(スウェーデン)

スウェーデン西海岸・ファルケンベリを拠点とするスワールは「良質なコーヒーと人とのつながりの芸術」に着想を得たロースター。ソムリエのベアトリスと元航空整備士のダニエルが2019年に創業。現在はロースターのヒセラを迎え、世界中のカフェで提供されるコーヒーを焙煎。2025年にはNordic’s Best Roastersで2位を受賞した。今回はヒセラさんが参加。

彼らは2チームに分かれて、TYPICA Collective に参画する生産者の農園を数日間にわたり訪問。その後、コーヒー博物館にて TYPICA Collective 初のイベントを開催しました。イベントでは、プレゼンテーションとカッピングを通じて、今年の TYPICA Collective Brazil を代表する生産者一名を選出します。

ブラジルの生産者は横のつながりが強く、会場の様子を見ると、お互いに顔なじみのようでした。ロースターも旅の道中で打ち解け、温かい雰囲気の中でイベントが始まりました。まずはロースターが、自らの歩みやフィロソフィーについてプレゼンテーションを行いました。各国を代表するロースターの語りに、会場全体が釘付けになりました。

続いては生産者のプレゼンテーション。天候による苦難を乗り越えた方、長い歴史を持つ農園の後継者、農園をスタートしたばかりの方など、それぞれの物語は強く心を打つものでした。コーヒーがより立体的に見えてくる感覚を覚えます。

プレゼンテーションを終えると、10軒の生産者から集まった10ロットをカッピングするセッションがスタート。会場には独特の緊張感が走ります。生産者もロースターと同じテーブルを囲み、同じカップを共有します。

カッピング終了後、ロースターは円になって、誰を今年のTYPICA Collective Brazil を代表する農園に選出するかを話し合います。ロースターが一人ずつ、選んだ生産者とその理由を述べていくやり取りには、クオリティに向き合う真剣さと、そこに込められた思いを汲み取ろうとするひたむきさが感じられました。

結果発表は、コーヒー博物館のオークションホールで行われました。ここは、かつて実際にコーヒー取引が行われていた歴史的な場所で、人とコーヒーが歩んできた年月の積み重なりが空間に染み込んでいるようです。

TYPICA Collective Brazil 2025 を代表する生産者に選ばれたのは、ファゼンダ・シャパドン。奥行きのある整った品質、そして彼の謙虚さと将来性が高く評価されました。少し照れくさそうにする彼を、会場にいる全員が祝福します。彼は翌週に日本で開催されるOKAGESAMA COFFEE EXPO 2025 への参加チケットを手にしました。

ここから、生産者とバイヤーの一対一の関係ではなく、共働態としての関係性が始まります。今回のイベントを通じて、その感覚を概念ではなく手触りを伴って実感しました。今後、ブラジルにとどまらず、他の生産国でも開催する予定です。今後、どの国でどのような共働態が生まれ発展していくのか、楽しみでなりません。