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すべてのコーヒーラバーが選ぶ本当に美味しいコーヒー。「人が人を想う心」が美味しさを決める
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TYPICAの年次総会「TYPICA Annual Meeting」は13日、東京ビッグサイトで4日目を迎えた。世界中のコーヒー生産者、ロースター、生活者など、コーヒーを愛する全ての人が本当に美味しいコーヒーを推薦する「TYPICA GUIDE」のFinal Roundが開催され、東京のRaw Sugar Roastが最高賞の三つ星「3-Star Roaster」に輝いた。ロースターとつながりの深い生産者たちも集まり、ファイナリストたちのプレゼンテーションを通じてコーヒーへの情熱や誠実さを肌で感じた。
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TYPICAブースでは前日に続き、世界各地で活躍するロースターのブリューイングが行われ、韓国、オランダ、ドイツのロースターが登壇した。オランダのUncommonのクレイさんは「みなさんと学ぶ場にしましょう」と呼びかけ、精製に失敗したなどの理由で通常は提供しない「悪いコーヒー」を通常のコーヒーとともに並べた。多くの参加者が体験し、コーヒーの美味しさをよりクリアに感じ取っていた。
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生産者の顔が見える旬のコーヒーが毎月届くサブスクリプションサービス「TYPICA CLUB」の詳細も発表。トークセッションに参加したAcacia Hills(タンザニア)のレオンさんは「TYPICAのダイレクトトレードによってロースターとの顔の見える関係が生まれたことですら大きな変化だったのに、さらに先のステップがあるとは。飲み手とつながり、双方にWin-Winの関係を築けるのは、コーヒーに関わる誰にとってもすばらしいこと」と話した。
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SCAJでの3日間の出展における目玉企画が、ステージで開催された「TYPICA GUIDE」のFinal Roundだ。本当に美味しいコーヒーに出会える「TYPICA GUIDE」は生産者と生活者をつなぐ陰の立役者であるロースターに光を当てたいとの思いから始まった。コミュニティマネージャーが推薦した一つ星118軒のうち、特別推薦人らがロースターのプレゼンテーションをもとに7軒を二つ星に推薦した。特別推薦人は国内外の各分野で活躍するコーヒーラバー9人が務め、志、原体験、サステナビリティなどを基準に国内7エリアから選出。事前推薦を含め、世界28カ国、約700人のコーヒーラバーが選考に関わった。
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ファイナリストは持ち時間の7分で、生産者への想いや自身のビジョンを語った。三つ星に輝いたRaw Sugar Roastの小坂田さんは、最後に登場。Rockbern Coffee(ケニア)やNayra Qata(ボリビア)の生産者との出会いを語り、「生産地で何が起きているかを知り、それを一杯のコーヒーを通じて飲み手に伝えることがロースターの責務だ」と述べた。
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「SCAJ 2022」のFinal Roundには20を超える国の生産者も集まった。同時通訳とオンライン配信を活用し、国籍や空間を越えてグローバルに発信した。
Moplaco(エチオピア)のエレアナさんは「ロースターたちは若さはもちろん、ダイレクトトレードを通じてロマンを実現したいという熱量にあふれていた。10年前、スペシャルティコーヒーはコーヒー業界で生き残っていけないかもしれないと思っていたが、彼らの姿を見ていると希望が湧いてきた」と称えていた。
Peralta Coffeesのフリオさん(ニカラグア)も「一つの空間にこれだけのトップロースターが揃うのを初めて見た。まるで演劇のようで、何が起こるのかとワクワクしながら見られた。勝者は一人だが、どのロースターからも一杯のコーヒーにありったけのアイデンティティを込めようとする姿勢が感じられた」と感心していた。
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その後、小坂田さんと特別推薦人の向千鶴さん(WWDJAPAN編集統括兼サステナビリティ・ディレクター)を交えたトークセッションも実施。向さんはコーヒーとファッション業界に求められている共通の問題として透明性を挙げた。「会ったことのない生産者の情熱が小坂田さんを通じて私に入ってきた」と小坂田さんに祝福のコメントを送った上で、「誰が、どこで、どんな思いでものづくりをしているのかが分かる透明性は良いことというより、当たり前のことになっている。こうした価値を技術や品質を含めて伝えているTYPICAの姿勢に共感した」と振り返った。
TYPICA代表の後藤は「本当に美味しいコーヒーをつくるには生豆や焙煎も大事。抽出や顧客サービスも大事。でも本当に美味しいのは人が人を想って作っているコーヒーなんだと確信を深めることができた」と力を込めて語った。今後はTYPICAが拠点を置く韓国、台湾、欧州でも「TYPICA GUIDE」を開催する構想を練っている。
文・竹本拓也
写真:Kenichi Aikawa