スペシャルティコーヒーのマーケットにおいて最もポテンシャルが高い国の一つ、ペルー。Cultivarは、Traboccaの同僚だった二人がペルーに魅了され、2017年にスタートしたコーヒーカンパニー。今回はアムステルダムに拠点を置くリサーネにインタビューした。アムステルダムはロックダウンによって飲食店が閉まっており、インタビューする場所に困った私達は、公園のベンチに座って話し始めた。
コーヒーとの出会い
私はアムステルダム近郊のハーレムという街出身で、アムステルダム大学で文化人類学を学びました。人がなぜその行動をするのか、どのように物事を決断するのか、ということに興味があったのです。学生時代にバリスタの仕事を始めて、完璧なエスプレッソ、完璧なカプチーノをつくることに熱中しました。2007年にオランダのバリスタチャンピオンシップに参加したりもしましたが、あまりうまくいきませんでしたね(笑)
大学では中南米の文化を集中的に学びました。コーヒー生産者と会うために中南米を旅したとき、私は本格的にコーヒーと恋に落ちました。アムステルダムに戻り、プロのコーヒーテイスターになれる会社を探して、トラボッカに入社しました。クオリティマネージャーを5年間務め、さらにコーヒー生産地を旅してサステナブル・ディベロップメントのリサーチを行い、コーヒー生産者とどうしたらコーヒーチェーンがよりよくなるか話し合いました。コーヒーチェーンとクオリティ両方に関わるためには、自分で会社をつくるのが唯一の道だという結論に達し、2017年からペルーの生産地に通い始め、今に至ります。
なぜペルーなのか?
私はスペイン語を話すので、数多くの中南米の国々を旅していました。だからペルーを選んだのは自然なことでした。ペルーはとてもユニークでポテンシャルがあり、一緒に仕事をしたい多くの小規模生産者がいる国でした。
ロースターさんにとって、ペルーと言えばフェアトレード認証、オーガニック認証のコーヒーは思い浮かびますが、特別なフレーバープロファイルがあるとは思わないでしょう。でも、スペシャルティコーヒーのマーケットとつながりが無いだけで、ペルーにはたくさんの美しいコーヒーがあることを私は知っていました。多くの農園は標高が2,000mほどあり、ティピカ、ブルボン、カトゥーラ、ゲイシャ、パチェなど、ピュアな品種が育まれています。でも、誰もユニークなフレーバーの価値を理解しておらず、コンテナの中で混ぜられていました。
ペルーは大きな可能性を秘めた、アップカミングな国なんです
ペルーのコーヒーの魅力
ペルーの一番の魅力は、その多様性です。マイクロロケーションにそれぞれのフレーバープロファイルがあるのです。ペルーは北部、中央部、南部と大きく三つの地域に分けられますが、それぞれ別の国だと感じるくらい異なります。それぞれの地域のフレーバープロファイルを定義するのは難しいのですが、北部はフルーティーでクリーン、ブライト、イエローフルーツ、レッドフルーツ。南東部のクスコ地方は美しい厚みのあるチョコレートのフレーバー。中央部は、最近仕事を始めたのですが、フルボディで、とても甘い。エスプレッソやブレンドに好んで使われます。
ペルーのコーヒーが抱える課題
クオリティの観点では、農園面積の平均が2ヘクタールほどの小規模生産者に関しては、スペシャルティコーヒーの知識が不足しています。例えば、収穫時には完熟したコーヒーチェリーのみを選ぶセレクティブピッキングが必要とされます。生産者自身は勿論チェリーの色を判断できますが、それをピッカーさんに落とし込むのが簡単ではありません。ピッカーさんはバスケットの数によって収入が決まるので、手早く収穫したがるからです。発酵も同様です。発酵はミューシレージを取り除くために行いますが、それだけではなく、発酵が品質に深く関わることはあまり理解されていません。乾燥の工程はもっと大きな問題で、多くの生産者は乾燥棚を持っておらず、地面で乾燥させます。それには非常に大きな品質上のリスクがあります。それを解決するために、私達はヨーロッパのロースターとジョイントコラボレーションで乾燥場に投資をしています。
サステナビリティの観点では、例えば、中央部の特定の地域では、森林再生、オーガニック、パーマカルチャーのプラクティスが実行されています。でも、一番大きな問題はコーヒーの価格です。これに関しては、生産者からロースターまでコーヒーチェーン全体をファシリテートする必要があります。
2013年から2014年にかけてさび病が中南米を襲い、コーヒーの木はほとんど植え替えられました。国の政策によって農業再生のためのローンを組むことが可能になり、多くの生産者は病害に強いカティモールを植えましたが、それはカッピングのクオリティにおいては理想的とは言えない状況でした。でも最近、ティピカ、ブルボン、カトゥーラなどの伝統的な品種に回帰するムーブメントが起きています。もちろん病害に注意深くある必要性はありますが、これは発展的な変化だと思います。とは言え、さび病によって、多くの生産者は農園を閉めて土地を売り、仕事を求めて都会に出て行きました。
ペルーの生産者にとって、スペシャルティコーヒーはまだとても新しいものです。彼らは七、八年前にスペシャルティコーヒーにフォーカスし始めましたが、ほとんどの農園ではこの一、二年です。コーヒー生産全体を変えるために、やるべき仕事はまだまだあります。
コロナウィルスが及ぼした影響
3月にペルーでは深刻なロックダウンが行われ、ペルーに拠点を置く私のビジネスパートナー、テアドロスは家から出られず、農園を訪れることができませんでした。また、標高が低いエリアでは5月から6月にかけて収穫が始まるのですが、ピッカーさんを雇うのがとても難しくなりました。ただでさえ労働者はいつも不足しているのに、今年はとくに酷かったですね。農協からは契約している量に収穫量が満たない、という話も聞きました。輸出に関しては、遅延もありましたし、今回サンプルも予定通りには届きませんでしたが、予想より影響は少ないと思います。私達は、コロナウィルスを通じて、ディスタンスがあっても多くの事が可能だということを学んだと思います。いずれにせよ、影響は長期的な目線で見るべきでしょうね。
日本のロースターについて
日本のロースターさんは、コーヒーのクオリティに夢中になっている人が多いと感じます。これまで会った人たちは、プロファイルやフレーバーにとても詳しい人でしたね。そういう人と話したり一緒にカッピングするのはとても好きです。残念ながら今年はそういう機会が少なかったですね。
今回のオファーリストの中から個人的なお気に入りを教えて下さい。
選ぶのはとても難しいですが、スサーナさんのコーヒー(L2020-022)が好きでした。ファンキーなラムのフレーバーを感じたのですが、みなさんがどう思うかとても興味があります。
ロースターへのメッセージ
今回、多くのロースターさんにコーヒーを試して頂くことをとても光栄に思います。フィードバックや印象を聞かせてもらえると嬉しいです。私達のビジョンは時間をかけてコーヒーチェーン全体をひとつにすることです。是非それについて一緒に考えましょう。