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2024.10.18

Tanzania Harvest Update 2024/25

今年の9月、私はタンザニアでアカシアヒルズを営むレオンとアイディーンのもとを訪れました。滞在中、収穫したてのコーヒーをカッピングし、TYPICAで新たにオファーするロットを選びながら、収穫の進捗状況を確認しました。

農園を案内してくれたエドウィン・アガソは、アカシアヒルズとテンボテンボでコーヒーの品質および輸出物流を管理しています。ケニア出身の彼は、2010年にQグレーダーの資格を取得したコーヒーの専門家であり、18年以上にわたってコーヒーの品質評価、カッピング、マネジメント、輸出業務に携わってきました。

エドウィンは、コーヒー業界でのキャリアをスタートさせたケニアコーヒーボード(委員会)で1996年から2002年まで働いた後、サシニ・ティー&コーヒーに入社し2004年まで同社で勤務。同年にタンザニアに移住してから2020年までは、国内で存在感のあるいくつかのコーヒー農園で働いた経歴の持ち主です。彼の専門性によって、アカシアヒルズもテンボテンボも素晴らしい状態が維持されていることは言うまでもありません。

アカシアヒルズの2024年の収穫についてですが、例年と比べてかなり収穫期間は短く、収穫量も少ない状況です。この結果は自然由来の要因と農業的な課題によって生まれたものです。

とはいえ、アカシアヒルズがタンザニアにおいて最高のスペシャルティコーヒーを生産する農園のひとつであり、その品質の高さゆえ、ロースターたちから愛される農園であることに変わりはありません。

なぜ、今年は芳しい成果を得られなかったのか、コーヒー生産において地域全体が直面している機会や課題とともに、その理由を詳しくご説明します。

自然の摂理と気候が招いた「短期間の収穫」

アカシアヒルズは、今年、収穫量が減った主な理由を3つ挙げてくれました。

1:これがもっとも大きい理由ですが、2024年は休眠年(自然のサイクルにより収穫量が減る年)です。エルニーニョ現象とも関係しており、他の多くのコーヒー生産者たちも同じような事態に直面しています。長引くエルニーニョ現象がもたらした雨により、コーヒーノキはいっせいに力強く開花し、一度に集中して実が熟しました。

2:開花と成熟が一時期に集中したことで、養分や水分が均一に行き渡りませんでした。70%以上の花が1週間のうちに咲いたため、コーヒーチェリーの間で激しい資源(養分や水分)の奪い合いが起こったのです。肥料の供給が遅く、当てにならなかったことと相まって、密度が低くて軽いコーヒーチェリーに仕上がり、生産量の低下を招きました。

3:7〜9月にかけて、想定外の乾燥期が到来したことです。降雨量が不足したことで、開花が阻まれ、コーヒーチェリーの成熟、熟成が遅れたのです。幸いにもこの影響は限定的で、アカシアヒルズにてフリーウォッシュドで精製したコーヒーのうちわずか約3%にしか影響は及んでいません。

結果として、いつもよりオファーするコーヒーの量は減るかもしれません。しかし、私たちはこれまでレオンやエドウィンと力を合わせて密に連携してきたので、品質においても物流においても高い水準を満たしていることが期待できます。今年は一部のロットの競争率が非常に高くなり、確保することがこれまで以上に難しくなるかもしれません。

効果的に肥料を与えることが、木に幸せをもたらす

大雨と開花のサイクルのおかげで、コーヒーチェリーの均一な成熟が促されました。アカシアヒルズでは効果的に肥料を与えることで、よくある「チェリーの発育にムラがある」問題を回避したのです。

気候がらみの困難

気候変動は、世界のコーヒー生産者にとってのっぴきならない課題であり続けています。今年のアカシアヒルズもその例に漏れず、コーヒーの開花や発育、成熟という重要な段階で降雨が偏った地域では、その影響を免れませんでした。天候が予測できない現状は、収穫に関わるさまざまな問題を引き起こしています。

おまけに、強風や気温の変動の激しさ(日中はいつもより暑かった日は、夜になると異様に寒かったり)は、コーヒーノキにさらなるストレスを与えました。これらの気象条件に加えて、湿度が高く、暖かい環境は、害虫や病気がもっとも広まりやすい状況をつくりだしました。収穫量を大幅に減少させるコーヒーチェリーの病気や葉のさび病は、チェリーがまだ木になっている段階だけでなく、精製後、手作業で選別、色分けをしている過程でも起こりました。

アカシアヒルズとタンザニアのコーヒーが直面している、より大きな課題

アカシアヒルズが今年直面した課題は、タンザニアのコーヒー業界全体が抱える困難とも結びついています。以下が、主な問題として挙げられます。

1:降雨の不安定さ:降雨の量やタイミング、偏りが予測不可能な状況が続いており、コーヒーの開花やチェリーの発育に影響を与えている。

2:コーヒーノキの高齢化。特に小規模生産者が所有するコーヒーノキの多くが老木化しているため、生産性が低下し、生産力も制限される。

3:低いコーヒーの価格。世界の平均と比べて、タンザニアの農家はコーヒーによって得られる収入が少ないことがままある。

4:害虫と病気。コーヒーチェリーの病気と後期の細菌性疫病は現在進行中の脅威であり、天候の不安定さによって悪化している。

5:労働力不足。熟練したピッカーが不足しており、特に大規模農園ではその問題が顕著。

量より質

アフリカでのコーヒー生産の6%、世界の取引の0.7%を占めるタンザニアでは、独特なフレーバーで知られるマイルドアラビカコーヒーがつくられています。そのなかで、アカシアヒルズは重要な役割を果たし続けています。

2024年の収穫量は減りましたが、「アカシアヒルズのコーヒーの品質は際立っている」という評判が揺らぐことはないでしょう。いろいろと課題はありますが、コーヒーチェリーの均一な成熟、細部まで気を配った精製により、すばらしいプロファイルのコーヒーを提供できることを約束します。今年の結果から学んだ教訓や持続可能なあり方について考えたとき、アカシアヒルズは今、いずれより大きく飛躍するためにしゃがんでいる状況と言えます。農家の献身的な努力や地域の独特な気候条件のおかげで、アカシアヒルズのコーヒーは、世界市場でも際立った存在であり続けるでしょう。

今後を見据えたとき、彼らは単に生産量を増やすだけでなく、タンザニアで最高級のコーヒーをつくり続けてくれると思います。

文: サミュエル・ペレス・コレア(Head of QC)

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